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見直したよ!Pineau d’Aunis

Pineau d'aunis

胡椒の香りが特徴的と言われる品種といえばSyrah/Shirazが一番に挙がり、特に黒胡椒が特徴的と言えるでしょう。では白胡椒が特徴的な品種は?となった場合、 Pineau d’Aunisを超えるものはないんじゃないかと思う位、白胡椒が広がるワインになります。

Pineau d’Aunis(ピノー・ドーニ)はロワール地方原産の黒ブドウ品種で、別名Chenin Noirとも言われています。実はそこそこ歴史もあり、英国国王ヘンリー3世のお気に入りでもあるピノー・ドーニから造られたワインは1246年にイギリスに輸出したとの記録が残っています。その名前の由来はフランス語のPin(松)からきており、葡萄の房の形が松ぼっくりを思わせることからこの名前になり、12世紀当時のロワールではワイン用ブドウとしての栽培をしていたそう。またAunisは場所の名前で簡単に訳すとドーニにあるピノー品種(そのままだ)になる。

ドーニは当時アキテーヌ公爵の領地で、ボルドーを学んだ人ならすぐにそこでエレノア・ダキテーヌ妃が思い浮かぶことでしょう。このヘンリー3世はエレノア・ダキテーヌの孫に当たります。繋がりましたね。エレノア・ダキテーヌの末っ子であるジョンがヘンリ−3世のお父さんです。ヘンリー1世がイギリス王になった事によりフランス領からイギリス領に変わったことなどが、なぜこのマイナー品種がイギリスで?という理由につながっていきます。歴史の紐を解くと色々と繋がっていきますね。

ドーニではかつては栽培されていたであろうピノ・ドーニですが、現在ではあまり幅広く多く栽培されておらず、中世有名になった後に近隣のSaumurに広がっていったのではないかという説もあります。19世紀前半にロワール地方全域特にTouraine地区で広く栽培されるようになったものの、19世紀後半に起こったフィロキセラの被害に加え20世紀後半のパリとボルドーを結ぶ高速鉄道LGVアキテーヌの建設により多くの葡萄の木が引き抜かれ、その結果フランス全土で20世紀中盤に約1700haあったピノ・ドーニの畑が2009年には約400haに減っています。

ピノー・ドーニ自体は収穫量が不安定であり、他のピノ系の葡萄と同じように小ぶりの房を持ち、灰色かび病に侵されやすく、正直造り手にとっては手間暇かかる割には収穫量も見込めないなんとも生産性の低い品種ですね。またテロワールの状態が最終的なブドウの出来に左右され、例えば石灰岩の多い土壌では早く熟すのですがフェノール成分や香味成分の広がりに時間がかかる一方、冷たく多く粘土を含む土壌においてはブドウがゆっくりと熟していくといったいわば、どういった土壌に植えるかが最初の段階で非常に大切になってくる品種です。そのような理由もあってか、どんどん生産が減っているのかもしれませんね。

通常、ピノー・ドーニは赤ワインやロゼスパークリングのカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、ガメイとのブレンド用として(幸か不幸か補助品種的な役割)造られていましたが、トゥールの北に位置するVendomeでは赤・白・ロゼのすべての単一品種のワインとして造られています。ブレンドとしても悪くはないのですが、良い造り手の単一醸造のピノー・ドーニは香りも高く、食事とも合わせやすいので美味しいのですよ。さて、今回のワインはと…

Domaine de Montrieux Le Verre des Poetes, Loire, Vin de France

Domaine de MontrieuxはVendômeに醸造所を持ち、ピノー・ドーニのスペシャリストとして有名なEmile Herediaがワインの栽培醸造を行っています。ドメーヌの創業は1999年と比較的新しいのですが、畑の区画や位置、ブドウの木の樹齢、土壌などの違いを細かく分けて、どのワインに使用するかを決めたりと細かい作業を行っている造り手です。特にブドウの古木を重要視しており、特にDomaine Montrieuxの畑の内の幾つかは非常に古く、プレフィロキセラの区画(フィロキセラの前から植わっているもの)も含まれています。フランスでプレフィロキセラの区画が存在するとは私も知りませんでした。

栽培はブドウと畑の健康状態に非常に目を配り、常にブドウありきの精神で栽培を行っています、化学的なものは一切使用しないといった徹底ぶり。ラベルにも書かれているように、ブドウは手摘みで収穫しています。今回のワインはピノー・ドーニ100%で造られており、ブドウは他の畑とは少し離れた場所にある事からAOCの認定する場所に含まれていないため、Vin de Tableの格付けとなっていますが、樹齢100年を超えるピノー・ドーニも含まれています。特に新しいビオ系の作り手に多い状況ですが、まさしくAOCが全てではないと証明できる作品の一つですね。

醸造はステンレスタンクにて1カ月以上マセラシオンとアルコール発酵を行い、その後6年使用した古樽でマロラクティック発酵を行っています。ワインは赤系果実の熟した香りに加え、白胡椒、ハーブ、スパイシーでありながらもミネラル感もぎっしり感じます。ヴィンテージは確か2012だったかな。透明感のあるルビー色でボディも軽すぎず、重すぎず、程よい感じが心地よく、飲み疲れしないワインでしたね。かといって熟成には向いないわけでもない。熟成したらきっともっと面白いワインになりそうです。

ビオ系のワインの良さは飲み疲れしないこと、そしてブドウ品種の特徴が教科書ですか?ってなくらい位出てくる。外観がくぐもっていたりと、人によりビオ系のワインは賛否両論だけれど、私は好きですね。造り手のポリシーがよく見えるものが多い。ビオであれノンビオであれ、結局ね造り手のポリシーの見えるワインは喜びをもたらしてくれるよと日々感じるこの頃です。

マリアージュは鴨のリエット、チーズの盛り合わせ、私の大好きなステーキタルタル。料理とワイン両方満喫したのは言うまでもなし。ステーキタルタルがあればどこの店でも頼むくらい好きなのですが、ここのステーキタルタルは香港で一番好きだな。ワインラベルに書かれているモリエールの詩—
「財産や知識、名声といったものはやっかいな心配事をちっとも取り除いてはくれない。人々が幸せになるには、よく飲むことだ」—
そのものなワインで、そしてその通りに過ごした夜でした。って結局飲んだくれてるではとツッコミなしでお願いします。

La Cabane Wine Bistro
G/F, 62 Hollywood Road, Soho, Central,
Hong Kong
(852)2776-6070