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南蛮ワイン≒ポルトガルワイン?

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カルタ、カステラ、金平糖、天ぷら…語源を辿るとそれはポルトガル語で、ヨーローッパで最初に日本と貿易を始めたのがポルトガルというのは有名なお話。宣教師フランシスコ・ザビエルが持ち込んだポルトガルワインを日本で最初に飲んだと言われているのが織田信長で、彼が飲んだと言われている赤ワインは『珍陀酒(ちんたしゅ)』と当時呼ばれていました。ポルトガル語で赤ワインを”Vinho Tinto(ヴィーニョ・ティント)と言いますが、恐らくティントが訛ってか聞き間違えてかチンタになったのでありましょう。大航海時代真っ只中で、大西洋、インド洋、そして太平洋と長い海路を温度管理のできるコンテナーなどなく旅してきたわけで、もし信長が辛口のワインを飲んでいたのであれば恐らくそれは酸化が進んだものだったでしょう。ただし、ポルトガルにはポートやマディラといった長期保存も可能な酒精強化ワインがあるので、珍陀酒はポートワインだったのではと私は推測しています。

ポルトガルワインと言えばポートワインというくらい、ポートの知名度というのは非常に高いのですが、通常のスティルワインも沢山造っています。またポルトガルはコルクの生産地でも実は有名で背世界の約50%のシェアを持っています。WSETディプロマのUnit3の試験問題の一つがポルトガルワインだったな(遠い目)。歴史的に協同組合で造るカジュアルなワインが主流だったのですが、量より質を追求する個人醸造家が増えてかなり品質が上がりました。状況はスペイン多少似ていますがが、色々な条件が重なりスペインの方がその取り掛かりが早かったことが国際社会への認知度に差が出たように思います。とは言え、栽培しているブドウ品種の違いやワインのスタイルも大きく影響をしているのですが。

香港でもポートやマディラ以外のポルトガルワインというのは多少あるものの、中々お目にかからない状態ですが、マカオは旧ポルトガル領だったのもあり、ポルトガルワインの種類が香港よりも豊富なのです。マカオに来たからにはポルトガル料理にポルトガル料理でしょということで、今回のワインはこちら。

Herdade de São Miguel Private Collection 2009, Alentejo, Portugal
 Casa Agricola Alexandre Relvas

まずポルトガルワインの格付けとして以下3つに分けられます。
1)  Vinho de Mesa 所謂テーブルワイン
2) Vinho Regional IGPに当たる地理的表示ワイン
3) Denominação de Origem Controlada (DOC) 原産地呼称ワイン

今回のワインは2)の部類にあたり、ポルトガル南部のAlentejoという地域からのもの。アレンテージョは元々穀物やコルクの栽培地で、90年代まではワイン生産も政府の後ろ盾のある協同組合産のものがほとんどであり地元消費に終わっていたのが、EUからの財政補助により高品質なワイン生産と輸出に力を入れることができ、また自社畑を其々の所有者に返すことにより、新しいワイン産地として台頭してきた非常にユニークな場所です。質を追求するスタイルに政府も協力したということになりますね。夏の気温は非常に暑く35~40℃あり、日射量が多く(年間約3000時間)雨が少ないため、水の確保が必要で灌漑を許可しています。

 

醸造所ははAlentejo地区の真ん中、Redondoに位置しており、今回のワインは元々Herdadeの場所をを1997年にAlexandre Relvasが獲得して畑にしたところで、Casa Agricola Alexandre Relvasによって一番最初にリリースされたシリーズ。ローム層、粘土、シストで構成された土壌からできたAlicante BouschetとAragonez。最近はここアレンテージョでもカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シャルドネなどの国際品種の栽培も非常に盛んで、暑い気候もあるせいかニューワールドのようなスタイルのワインに仕上がっています。

このアリカンテ・ブーシェですがフランス産であり、タンチュリエ系(果実が赤い)に分類されます。1866年にHenri Bouschetによってプティ・ブーシェ(これもタンチュリエ系)とグルナッシュを交配させてできた品種です。深い色素が供給できるため、Aramonのような色の薄い品種への色付けに使用されておりましたが、アレンテージョでは色素、タンニン、果実の質が良いものができるため、ワインにアルコールと骨格を与えます。AragonezはTempranilloの事で、こちらで呼ばれています。テンプラニーニョは場所により名前が変わり、また知られているだけでも552種類のクローンが存在するため、リオハやドウロのテンプラニーニョと仕上がりが同じではありません。Sangioveseもそうですが、クローンと産地により差が出ます。アレンテージョのアラゴネスはドウロに比べるとタンニンも酸味も控えめと言われ、主要品種ではなく補助的なものとしての取り扱いが主になっています。が、それこそ革新的な造り手は逆にそれを利用して、果実味感じるスパイシーでプラム香がぐっと出るものも出ています。

このPrivate Collectionはそれぞれのブドウ品種の比率が分からなかったのですが、手摘み収穫の後に除梗し、発酵に入る前に48時間の醸しを行い、解放式の大樽で22~28ºCで温度管理をして発酵。その後オーク小樽でマロラクティック発酵。非常に色も濃く、アルコール度数が14.5%とかなり高い。アルコール度数が高いのは日射量が多い事の証明でもあり、ブドウのフェノール系物質まで熟成できる強み、ワインになった時に香りを持ち上げる力が強くなるなどボーリューム感あふれたワインになり優れた点はありますが、一方より甘みを感じやすくなること、フィネスやエレガンスに欠けやすく、飲み疲れしやすくなることも否めません。アルコール度数が高ければいいって問題でもないですが、ニューワールドスタイルで造られるワインは得てしてアルコール度数が高いものが多いですね。

このワインもプラムやブラックベリーなどの黒い果実の凝縮感にチョコレートやコーヒーの香り、タンニンと酸味も程よく、バランスが良く取れているワインでした。カベルネとの違いはフィニッシュが短めであること、其れ故、食材の持つ味わいをより強調するスペインやポルトガルの料理との相性がいい。以前から定評のあったミシュラン一つ星のレストランでのポルトガル料理とのマリアージュ。どれも美味しかった。自家製チョリソー、ダックライスやポルトガル風ステーキ等、料理も美味しくワインも美味しい至福な夜だったのでした。料理もワインもマカオ価格にしてみたら高めではありますが(ミシュラン一つ星だしね)、ポルトガル産の珍しいワインに出会えますよ。

ポルトガルとの貿易を南蛮貿易と読んでたからポルトガルワインはやっぱり南蛮ワイン?じゃあの南蛮づけもポルトガルからのものなのかな?にしてもポルトガル、隅に置けないね。

Antonio
Rua dos Clerigos No.7,
Taipa, Macau
(853)-2888-8668