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偽物との戦い

Genuiness and Counterfeitファッション、食品、電化製品、日常にある全てものが名声を得れば得るほど、偽物が大量に出回るのが世の常で、ワインを含む飲料の世界でもここ最近大きな問題になっています。FBIも介入して大きなニュースとなったDr.ContiことRudy Kurniawanによる偽物ワイン事件を始め、摘発されてないものの怪しい話や、怪しい高級ワインは日に日に巧妙になっていっています。ワイン業界にいる人達に取っては明日はわが身。どう歯止めをかけたらいいのかというセミナーがSPITで開催されたので参加してきました。

講師はChristy’sやZachysのワイン部門で経験を積んだDavid Wainwright氏。
彼によると偽物ワインは簡単に2種類に分けられます。
1)安い偽物
2)巧妙な模造品
1)においてはまずワインや生産者のスペルが間違っていたり、法律的にありえない物だったりと直ぐに偽物と見破れるものです。例えば Château PétrusのスペルがChâeau Pétrusだったり、ラベルにChambertinと書いてあるのに白ワインだったりとまさしくなんちゃってワインが殆ど。昔ワインセミナーの生徒さんが「先生、夫がシャトー・マルゴーの白を飲んだと言うんですよ。マルゴーは赤だけだって言っているのに、夫が全然譲らなくて夫婦喧嘩しました!」ということがありました。このご夫婦お互い言っていることは間違っていないのですが、説明が少し足りなかったようです。

確かにマルゴーの白は存在しますが、ご主人んが飲んだのはPavillon Blanc de Château MargauxでChâteau Margauxから生産されている白ワイン。ですが、フランスのワイン法により1級のマルゴー赤と同じ格付けとして扱われません。奥様はChâteau Margauxを生産者としてでなく、1級の赤ワインとして捉えていたのでそれは話が噛み合わないわけです。ボルドーのグランクリュは赤のみにしか適用されないのに、白はおかしい!という奥様の見解。…と話は逸れましたが、このようにややこしいものもありますから、多少の知識は必要です。ワイン業界に身を置いている人は1)のレベルなら簡単に分かるでしょう。

問題は2)の方。Rudy Kurniawanのケースもこちら。ラベル、キャップシール、ボトル、全てにおいて非常に巧妙です。上の写真のボトルですが、数本だけ本物であとは全て偽物。見分けがつきますか?スペルミスなどの1)レベルのものも含まれており、それはすぐに分かります。が、しかし非常に難しい!DRCは3本ありますが実は1本だけ本物。実際見比べましたが少しずつ違いはあるものの、どれが正しくどれが間違っているのかが分かりません。あのなんでも鑑定団と同じですね。古美術商の鑑定においては聞くところによると、偽物と本物との見分けの訓練は最初3年間は本物だけしか見せてもらえないそうです。本物を見続けることによって、何が偽物かが判断できるようになるとのこと。Christy’s やSotheby’sは当然そのようなプログラムがあるでしょうし、古いオークションハウスなので過去の資料もたくさんありますからそこから正しい情報も得られるのでしょう。それでも敵は更に巧妙な仕掛けをしてくるので、Wainwright氏も毎日が勉強ですとおっしゃっていました。

模造品のほとんど中国で造られていたと言われていますが、今は古いレア物のワインはヨーロッパからの偽物も沢山あるそうで、出処や誰を経由しているのかなど常に情報を得ることが重要です。まさしく色々な場面において情報を制する者が世界を制するのは、ナポレオンのワルテローの戦いから変わっていないのですね。業界における問題点などこれからの課題はまだまだ山積みですが、技術の発達に伴い模造品を生産者の立場から防ぐ動きも活発になっていることはとても良いことだと思います。きちんとその商品を造っている生産者にとって、模造品は自分たちの商品価値、ブランドを落とす百害あって一利なしなものですからね。では実際どうしているのか以下で紹介します。

1, Security Printing / Ultraviolet Signature
2, Scannable code
3,Laser etching bottles / Individual numbered & Bar coded
4, Special ink
5, Holograms
6, Encrypted micro text
7, Bubble tag
8, RFID & NFC
9, Ponsot i-case

1,Security Printingは紙幣やパスポートにも使われており、商標登録した紙にスタンプなどを紫外線認証を施したものをラベルに利用。複製ができないようになっており、カリフォルニアのHarlan Estateがこのシステムを採用しています。2はシールに特殊情報が組み込まれており、スキャンをすると情報が全部出てくるもの。3,はレーザーでボトルに個別番号やバーコードを刻印。4は特別なインクを利用して、ラベルの複製をさせないようにする方法。例題として、colginはoを他のアルファベットと別の色に変えており、色はワインの種類により変えています。5はクレジットカード(裏面)に採用されている、あのピカピカしたあれです。同じものをラベルの一部に貼り付けて偽造を防ぎます。これは剥がそうとすると一部もしくは全部破壊されるため、再利用はできません。6はラベルに暗号化した情報がラベルに隠されており、ある一定の条件での拡大で飲み見られます。Château d’Issanは5と6両方採用しています。

7のBubble tagは認証シールの一種で泡のように浮き上がっています。複製が不可能でChâteau Lafite-Rothschildとそのセカンドワインに採用されています。8のRFIDはID情報を埋め込んだタグから電磁波によって情報を取り出すことができるシステムで、NFCはRFIDがさらに進化したもの。電子チップタグですね。ラベルの後ろに埋め込んだり、キャップシールやボトルが入っている箱や段ボールにも貼り付けることができます。消費者はワインに関する全ての情報を得られること、またワインの出処の保証があること等、消費者側がきちんとワインが本物であることが認識できる利点がありOpus One, Ornellaia, Le Pin等が採用しています。最後の9はDomaine PonsotのLaurant Ponsotが醸造所から消費者までどのような温度管理でワインが運ばれたか、消費者が知ることのできるシステムです。ワインの入っている木箱にセンサーが取り付けられており、ワインの受取手はスマートフォンのアプリPonsot iCaseをダウンロードし木箱に付いているNFCをスマートフォンで読み取ると、醸造所を出て商品の受け手の手元に届くまでの温度データがグラフで出てくるというもの。きちんと温度管理がされているか確認できるもので、またワインが正しく醸造所から出てることを証明するものでもあります。

模造品のほとんどが市場価値が高く、人気のあるワインを標的にしており、そのため各生産者たちはそれぞれ適切なものを採用して未然に防ぐ動きをしていますが、これ資金力がある程度あるからできることです。しかし安くて、そこそこのものは模造品に狙わないから大丈夫かと言えばそうでもなく、ある日を境に大きく売れ始めたり、急に人気が上がって需要と供給のバランスが著しく崩れた商品はいつ模造品の対象になるかわからないわけです。それはワインに限らずウイスキーにも言えることで、ここ数年で世界で爆発的に売れている日本産ウイスキーが狙われないか、正直ヒヤヒヤします。今やオークションでも破格の価格が付けられる軽井沢シリーズなどもそのうち対象にされやしないか…いつ自分に火の粉が降ってくるかわからないから日本の生産者方もそろそろ考えた方がいいよーと老婆心ながら思う次第です。