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アジア・オセアニア最優秀ソムリエコンクール

le concours A.S.I du meilleur sommelier d'asie & oceanie

2016年に行われる世界最優秀ソムリエコンクールのアジア・オセアニア地区代表選考会が香港のコンベンションセンターにて行われました。この日の午前中準決勝に進んだ9名のうちのBanjo Havis-Plane氏(オーストラリア)、Ho Pong Wallace Lo氏(香港)、石田博氏(日本)の3名が決勝に進みました。野坂昭彦氏は以前香港にお住まいでエレガントなサービスの定評のあるソムリエでしたので、彼の決勝戦に挑む姿を見たかったのですが、彼の決勝戦を見られなかったのは非常に残念でした。私はソムリエのコンクールには当然出たこともないし、見学も初めて。ここまで来るにあたって、選手の皆さん相当な努力をされた事と思います。その決勝の内容ですが・・・

決勝課題は2部に分かれており、くじ引きにて順番を決め、前半の課題は各選手一人ずつ審査されます。
前半:
1.デギュスタシオン(ブラインド・テイスティング)
(1)ワイン2種類(赤白各1種類)について6分以内でコメント
(2)黒いグラスに入った飲料6種類を3分間以内で、製造方法、主な原材料、生産国、ブランド名を答える
2.スライド問題
ワインリストの間違い探し。1枚のスライドに3種類のワインが記載されており、1つ必ず間違った箇所があるのでそれを指摘する。合計8枚のスライドがあり、スライド1枚につき30秒の時間制限。
3.サービス実技
実際のレストランと想定し、3つのテーブルが用意されており、全て合わせて18分間与えられています。テーブル1(4名)、テーブル2(3名)、テーブル3(3名)を順番にサービスするのですが、それぞれのテーブルに仕掛けがあります。
(1)テーブル1
8品の飲茶のコースに3種類のロゼワインを選び、それぞれどの料理に合わせるか説明し、ロゼワインが苦手な男性客(1名)のために3種類のビールを選び、同様にどの料理に合わせるか説明する。またさらにロゼワイン、ビールともに3種類は違った国から選ばなくてはいけない。ワインの他にもビールの違いを問われる問題。深い知識が要求されます。
<メニュー>
– 焼売
– 海老蒸し餃子
– 豚肉饅頭
– 野菜春巻き
– マンゴープリン
– ワンタンスープ
– 中華風ちまき蓮葉包み
- 胡麻団子
香港で馴染みのある点心料理ばかりです。
(2) テーブル2
ドイツワイン Schloss Vollrads 2014(Riesling)をサービスし、サービス途中でヴィノロック(ドイツワインに最近用いられている最新テクノロジーのガラス栓)とコルクとの違いについて尋ねられるのでそれを説明する。時間が限られていますから、作業をしながらお話を続けなければなりません。
(3) テーブル3
ホスト客が今朝方電話をして2時間前にデカンタージュを依頼したはずのBellinger Cabernet Sauvignon 2013が準備されていないという状況をどう対応するのか。

後半:3選手同時に課題が与えられてこなします
1. 画像問題
全部で10個ある写真が1問づつスクリーンに映し出されて(人物、シャトー、道具など)、15秒間でスケッチブックに記入する。
2.実技問題
Moet et Chandon Rose magnumを制限時間6分で18個のグラスに均等に注ぐのですが、一度注いで次のグラスに移ったら、前のグラスに戻って継ぎ足せません。更にボトル内にワインを残してはいけないという条件も付いています。つまり一度でどれくらいの量を注ぐのかを把握してないといけないということになります。

まず言えることは知識と技量、両方を兼ね備えていないといけない内容に加えて語学力。ソムリエの世界大会は英語かフランス語のどちらかを選ばないといけないのですが、母国語を選ぶことはできません。つまりフランス人は英語をアメリカ人はフランス語を選ばないといけません。これは言語において公平性を保てるようにとの配慮です。今回の場合、オーストラリアのHavis-Plane選手は英語は選べずフランス語のみ。香港のLo選手と石田選手はどちらを選んでもいいということになりますので、Lo選手は英語石田選手はフランス語で挑みました。うーん。これ公平に見えるけれど、香港に住んでいる私としてはLo選手は言語の面で有利と感じました。

実際その言語を使って日常の業務をどれだけ行うかと思うと、石田選手とHavis-Plane選手のフランス語の利用率は非常に低いと思われます。長年私のように香港に住んでいても怪しい広東語しかできなくても、英語ができれば事足りる香港ですし、政府の発表する公的な文書も広東語と英語の二ヶ国語表記で英語が浸透しています。実際業務において英語を利用する率は極めて高いという事を理解していただけると思います。同じことがカナダにも言えることだと思います。但し、言語に優位だったとしても、技術的な事や知識、訓練が加味されて判断されますので、あくまで言語的に見てという事。Havis-Plane選手は綺麗な発音でしたし、石田選手も流暢なフランス語で対応。言語において両者ともたゆまない努力、訓練をされた事を察します。

制限時間がある中でワインの特徴を外観から香り、味わい、そこから予想されるワインの産地や醸造方法等を壇上の上で述べる様子を見て、英語でワイン教育を受けてるであろうLo選手とHavis-Plane選手は、表現の仕方がWSETスタイルだなと感じました。味わいにおいてミディアム・マイナスとかプラスという表現の仕方が多かったように思います。一方石田選手はその様な表現方法が全く出てこない。形容詞や表現する言葉が多く、同じことを繰り返して言わないなど、なめらかで引き込まれるようなコメントの仕方でした。経験値に加え日々の訓練を目の当たりにしましたね。

WSETでの表現方法がとてもより客観性を持ったものに比べ、ソムリエ協会の表現方法は客観性を持たせているものの詩的な表現が多く、目の前にあるワインをお客様にいかに興味を持ってもらえる様に伝えるかというのがしっかりと感じ取れました。ソムリエの仕事は目の前にいるお客様にワインを販促する事ですから、WSETの上司にこのワインを買うか買わないかを報告するようなレポートとは求めているものが違います。石田選手の説明には圧巻でしたね。

次のワインリストの間違い探しは、いやこれまたどれが違うのさ?といったような問題が多くて有名なワインのアペラシオンが違うとかスペルが違うとか。結構マニアックな問題でした。前半最後の実技は、三者それぞれで、特に(3)の電話して2時間前にデカンタを頼んでおいたのに行われていなかったという設定で、どう対応するかは非常に対照的でした。Lo選手は”It is ok. No problem. “に始まりダブルデカンターをしましょうか?とホストに提案。Havis-Plane選手は申し訳ございませんと謝罪から入り彼もダブルデカンターを提案。少し驚いたのが石田選手。謝罪なく、デカンタしなかった理由を説明。自分がその場にいたらどれを選ぶかな?と思ったら私は2番目のHavis-Plane選手が一番近いかな。石田選手の説明もとても理に叶っていましたが、ホストのリクエストに対して対応していなかったことを最初に謝罪していればもっと良かったのになーと思いますが、コンクールという非常に緊張してる場ですし、どれが正しいなどは分かりません。

Lo選手の”It is ok. No problem. “。香港は基本的にカジュアルなので、あーでた、香港スタイル!と思いましたね。日本の丁寧なサービスに慣れている方は驚くのも不思議ではなく、香港では丁寧さというのは大きく評価される事が少ないのか、あまり問題視されません。それより何をしたかにポイントを置くし、お客側も多少待たされることに慣れていない・・・。待たされるといってもそんなに待つわけではないのですが、全てにおいて物事が早く進む香港ならではでせっかちな人が多いのも事実です。Service Languageの大切さも現場ではあまり気づいていない事が見受けられます。とはいえ作業は早いのでLo選手は18分で全てのサービスを終えてました。

後半のスライド問題も世界のワイン事情や造り手などの知識が必要な問題だし、一番最後のマグナムのシャンパンを均等に18個のグラスに注ぐ実技もプレッシャーと戦いながら正確にこなす能力が試される過酷な内容でした。特に最後のマグナムシャンパンだからボトルは重いし、シャンパンだから泡が立って泡の部分も計算に入れて注がないといけない。課題は18個に均等に注ぐことですが、会場に準備されていたグラスの数は19個。用意してあるグラスを18個と選手全員が信じ込んでおり、3選手とも時間内に作業は終わりましたが、実は19個のグラスに注いでいたという。でもねー、凄いですねプロは。大きな誤差なく均等にグラスに注がれておりました。

石田選手が優勝を、2位はLo選手で3位がHavis-Plane選手と言う結果でした。石田選手は来年チリで開催される世界優秀ソムリエ大会のアジア・オセアニア地区代表として参加が決まりました。おめでとうございます、是非世界大会での活躍を楽しみにしています。流石にチリまで見に行けない・・・優勝を逃した2選手もまだ若いし、きっとこれからも機会があることと思います。Lo選手は香港でのサービスを牽引して行ってくれる人材に育ってくれると嬉しいですし、Havis-Plane選手は人柄の良さがサービスにも出ていて将来性のあるソムリエだと思いました。国籍を問わず可能性のある若手がどんどん育つのは嬉しいことですし是非頑張ってほしいな。今月末に日本代表選が行われますが、きっと素晴らしい選手が選ばれることだと思います。いやー、良いもの見せて頂いたのと共にとても勉強になった時間でした。