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St-Emilionの格付けって実はややこしいかも…

La Fleur

ボルドーの右岸と左岸のワインどちらが好み?と聞かれた時どう答えますか?私は左岸。右岸のワインはソムリエの勉強をし始めた頃は右岸の方が好きでしたね。恐らくカベルネ・ソーヴィニヨンの強さの耐性がなかったことと、メルローの円やかさが飲みやすかったのだと思います。歴史的に見て左岸は古くからイギリスとの貿易も盛んで、街を見ても非常に潤っていたことが手に取るようにわかります。

今回あけたワインは右岸のサンテミリオン。
Second du Chateau La Fleur Sant-Emilion 2007

サンテミリオンは中世の聖地でもあった、スペインのサンチャゴ・デ・コンポステラへ巡礼する旅路の宿場町として栄えていました。絢爛豪華な左岸の雰囲気と比べて、古い町並みが特徴的で丘の上からの景色はパッと見シエナやフィレンツェに似ていますね。1999 年に世界遺産として登録されており、ワイン産地の登録として一番最初の場所です。今やピエモンテ、最近ではシャンパーニュやブルゴーニュが世界遺産のリストに加わっています。

サンテミリオンの特徴は畑の大きさもシャトーの大きさも左岸に比べて非常に小さく、正直言葉は悪いですが、中小・零細シャトーが密集しています。これはサンテミリオンに限らず、ポムロールやフロンサック等の他の右岸の産地にも当てはまります。サンテミリオンのワイン造りは古くからの歴史があるものの、ワイン貿易も20世紀になってから花開いた場所で、左岸が老舗ならば右岸は新参者の扱いでもあったため、左岸のシャトーのオーナー達は歯牙にもかけない態度でしたが、今やボルドー=左岸のイメージを払拭させた右岸のパワーには目を見張るものがあります。

ポムロールでは”慣習的な格付け”は存在しているものの非公式となっていますが、サンテミリオンのみが唯一右岸で公式の格付け認定がされています。サンテミリオンの格付けはAC St-Emilion Grands Crusを対象としたもので、1855年に制定されたメドック地区の格付けから100年後1955年に始まりました。格付けはPremiers Grands Crus Classes(AとB)とGrands Crus Classesの2種類に分かれて、Premiers Grands Crus ClassesはAとBに分かれており、Aの方が格が上になります。地理的には”St-EmilionAC”とその北方を取り囲む”St-Emilion衛星AC”(4つ)があり、”St-Emilion AC”は、同一地域の中に”St-Emilion Grands Crus”と言う別のACをも持っています。St-Emilion Grands Crus ACはSt-Emilion ACより厳しい規定が課せられており、分析官能検査を受けています。Crus Classesに認められるにはGrands Crus ACでなければなりません。

                                     (2012年現在)

 Crus Classés  

Saint-Émilion AC

 Premiers Grands Crus Classés A : 4シャトー
 Premiers Grands Crus Classés B : 14シャトー
 Grands Crus Classés : 64シャトー
 Grands Crus : 約200シャトー
Saint-Émilion 衛星 AC  Lussac-St-Emilion
 Mongtagne-St-Emilion
 St-Georges-St-Emilion
 Puisseguin-St-Emilion 

メドック、ソーテルヌ、グラーヴの格付けと比べて違う点は生産者主導であり、一定期間内に見直しがあること。左岸の格付けは1855年に制定されてからムートンが2級から1級に昇格したのを除き他は一切変更ないため、格付けが施行された時は良かったけれど、今は…というシャトーも存在するわけで、その逆も然り。良い意味で一度格付けに認定されたらその格付けを外されることは起こっていないわけです。選ばれた者勝ちといいますか…

サンテミリオンの場合、昇格も降格もあり、10年に一度の見直しと現在格付けに認定されているシャトーであっても改定時には再度申請の必要もあり、今までの慣習とは違う規定を作りました。審査においてはワインのテイスティングが重視される事、また審査員にはワインシャトーのオーナーは含まれず、ワイン仲買人、ワイン商、法律家、ワイン醸造学者等の第3者で構成されていたため、公平で画期的と思われいたこの格付け制度でしたが、問題はやはり勃発。昇格は問題なくても降格は商売上がったりですからねー、死活問題です。降格されたシャトーにとっては販売活動に支障が出るしブドウ畑の不動産価値も下がるし、全てにおいて暗転は免れません。問題が起こらない方がおかしい。

実際2006年に格付け見直しが行われた際に、13のシャトーが降格され格付けを失いました。その後何が起こったかと言うと、降格された13シャトーのうちの8つのシャトーが不服を申し立てて訴訟。2006年3月ボルドーの行政裁判所(下級裁判所)は改定された格付けを差し止める仮処分命令を下します。しかし、逆の立場で2006年から昇格したシャトーもあったわけで、2006年の格付けでPremiers Grands Crus Classes Bに格上げ予定であった2つのシャトーChâteau Troplong-Mondot 、Château Pavie-Macquin)とGrands Cru Classesとして新たに認められる予定だった6つのシャトー(châteaux Bellefont-Belcier, Destieux, Fleur Cardinale, Grand Corbin, Grand Corbin-Despagne, Monbousquet)にとっては下級裁判所の判決は不服なわけです。

その後2008年7月にボルドー行政裁判所で、2006年格付けを取り消すという判決が出たことにより、サンテミリオンにとって最悪な状況になります。1996年の格付けは効力の期限がすでに切れて、さらに2006年格付けは法的に取り消された状況はサンテミリオンには格付けが存在しない事を意味し、格付けシャトーの全てが ”Grands Cru Classes”のをラベルへ記載をする権利を失ったことになるのです。その結果この判決の1週間後、上院が救済法案の採決に動き、『1996年の格付けの効力を延長し、2009年のヴィンテージまで有効とする』という修正法案を可決しました。しかし2006年の格上げ予定だったシャトーたちが法案に対して訴訟を起こし、複数の訴訟の応酬になりました。まさにカオスです…確かに格上げ予定のシャトーからしてみれば気に入らない事この上ないですね。

その後揉めに揉めた結果、最終的な法案は1996年格付けの有効期限は2011年のヴィンテージまで延長と、2006年に格上げされたシャトーには、2006年の格付けによるラベル記載の認可に落ち着きました。このサンテミリオンお家騒動の苦い経験から、サンテミリオンの格付けに関する法律改定も行い、新体制での審査で2012年に最新の格付けを公布しました。パヴィとアンジェルスのClasses Aへと格付け外だったヴァランドローのClasses Bへの昇格と言った華々しいニュースもあれば、降格という悲しいニュースもやっぱりあったわけで、新体制になったと言えどもまたもや裁判沙汰なサンテミリオンです。

ワインの品質に対して正当な格付けを目指したサンテミリオンは、やっぱりダイナミックで画期的でもありますが、絶対に公平に審査されているとは言えないのかもしれません。やはり全ての人を満足させる事というのは出来ないわけで。物事には絶対はないから全てではないけれど、ガイドラインとしては実際に信憑性はあるし。でもそれにしてもサンテミリオンの格付けってシンプルに見えてややこしいね。クラッセありとなしで大きく変わってくるんだから。

ほうれん草とカッテージ・チーズのカレーと共に頂いたサンテミリオン。無理ある組み合わせかと思ったけれど悪くなかったわ。

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