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産地別リースリング

Riesling
実力があるのにそのイメージがついてきていない代表選手〜リースリング〜ジャンシス・ロビンソンMWも『おそらく世界中で最も誤解され、誤って発音されていることの多い品種』と記しています。なんちゃら・リースリングと言う名前が多く、大体そのなんちゃらがついた場合のほとんどが、本家本元のリースリングとはまったく違う凡庸なものだから、純正ライン・リースリングにしたら迷惑な話でもあります。オーストリアのヴェルシュ・リースリングは例外ですが…

昔甘口ドイツリースリングがたくさん出回り、辛口がほぼないもののように扱われてしまったためなのか、今でもリースリング=甘口と思っている人が本当に多い。辛口の美味しいものがたくさんあるのだけれども、イメージがあまりに強いのか「えー、リースリング?甘いでしょ?」とほとんどの方がこうおっしゃいます。いえ、辛口の美味しいのがたくさんあるってーと飲ませると、辛口リースリングの存在に驚き、飲まず嫌いから脱出してくれます。それにしても可哀想すぎるぞ、リースリングの位置付け。

リースリングは育つ気候にうるさく、涼しいエリアでゆっくりと熟す期間を要するため栽培家にとっては手のかかる品種です。土壌は砂質、粘土、ロームと特に相性がいいと言われていますが、水捌けが良く日当たりのよい所ならば育ちますが、どの土壌で育つかワインに直接反映されます。特にテロワールを映し出すワイン産地として、ドイツに始まりオーストリア、アルザス、南オーストラリアが優良産地として有名です。シャルドネは醸造テクニックでなんとかなるけれど、リースリングは残念ながらそうはいかない。育った場所の特徴が香りが出るのもあり、特にオセアニアのリースリングはブラインドで出されてもすぐ分かります。

リースリングはアロマティックなブドウ品種として扱われるし、ほとんどの造り手は樽の香りをつけたがらないので、大概ステンレスタンクかドイツやアルザスなどでは古い大樽を使って発酵を行います。ただ、全く新樽を使わないかといえばそうでもなく、最近はファルツやバーデンといったドイツの温かい産地では高いアルコール度数や十分なエキスをブドウから得られるので、ボーリューム感のしっかりあるタイプには新樽を使ったスタイルも造られています。

ワイン業界仲間での定例ブラインドテイスティング。今回のお題はリースリング。各自1本ずつ持ち寄りで食事の前に討論です。順番にテイスティングして討論して、1つづつ答え合わせ。自分の試飲能力がまだまだと現実を突きつけられます。今回のワインはこの3つ。

1) Frankland Estate Isolation Ridge Vineyards Riesling 2011
    Frankland River Western Australia Australia 
2) Domaine Wachau Riesling Smagragd Kelerberg 2012 Wachau Austria 
3) Clemens Busch Marienburg Riesling Fahrlay-Terrassen Grosses Gewaches 2009
     Mosel Germany 

試飲した順番は2-3-1ですが、写真の順番に解説します。
1)西オーストラリア、グレート・サザンの小地区、フランクランド・リヴァー産。デカンターでオーストラリアリースリングのブラインドテイスティングの記事にて、1番か2番目に高得点だったのもあり、実際自分たちがどう感じるかも試したくてこちらを選んだのは私。オーストラリアのリースリングと言うと、エデン・ヴァレーやクレア・ヴァレーが出てきますが、フランクランド・リヴァーは少し内陸に入った所。単一畑で、オーガニックブドウからワインが造られています。南向きと北向きの畑で、下層に粘土質、上層はローム層の上に鉄岩砂礫の二重土壌。シトラス、スパイス、フリンティな香りに加え石油香、オセアニア独特のタルカム・パウダー。まさに教科書とうり。キリッと辛口で爽やか。ボディもM−なので食前酒から食中向き。酸味の効いたサラダやマリネがぴったりくる。

2)オーストリアのヴァッハウ産。ヴァッハウはグリュナー・フェルトリナーが有名ですが、辛口リースリングも負けてはいません。アルザスのグランクリュと同じくらいボディのしっかりしたものもあります。ドメーヌ・ヴァッハウは協同組合ですが、高品質なものを出しています。ケラーベルクは南東向き斜面の単一畑で近接のロイベンベルクと比べやや涼しい。花崗片麻岩土壌で、畑の一番低い場所は沖積砂質土壌。ワインはミネラル、桃やタンジェリン(日本のみかんよりも更に小さくオレンジ香が強い)、パイナップルといった南国果実の香りもあり、芳醇です。辛口でボディはミディアム+。この手のタイプは白身の肉、白身魚、かなり幅広く合わせられます。シュニッツェルとは抜群に相性がいいでしょう。やっぱりよく考えられています。

3)ドイツ、モーゼル産。中部モーゼルの中でもツェル村に近いピュンデリッヒ村のもの。ドイツの単一畑と集合畑は正直泣かされた。畑名を覚えるのが大変だったから。モーゼルは範囲が広いし、ドイツ語のスペルが入ってこなかったなと思わず回想。モーゼルワインは川と畑の傾斜とその向き、そして微妙な気候と土壌全てが組み合わさり、素晴らしいものは本当に素晴らしいのに、マーケティングが弱かったせいか幾つかのフランスの実力以上に値段が張るワインと比べてその逆を行く…値段が法外に上がらないので高品質のリースリングを納得した価格で得られるのは消費者にとっては嬉しいことでもあるね。でもこれも時間の問題だと思うからおちおちしてられない。

マリエンベルグの畑はものすごい急斜面で、南から南西に向いており、青色粘板岩土壌。所謂ブルースレートという土壌です。クレメンス・ブッシュのこの畑に植えられているリースリングはフィロキセラ前から植わっている接木なしで、オーガニック農法で造られています。色は濃い黄色。香りは熟した桃やネクタリンの核果類や蜂蜜、きのこの香り。熟成によって出てきたブーケか、貴腐のついたブドウをワインに一部使用したのかもしくは両方なのか…かすかな石油香が出始めていたから熟成からと推測されるかな。やや辛口で酸味が高いので、酸と糖度のバランスがとてもよく、優雅で余韻も長い。そのままでも素晴らしく楽しめるけれど、てんぷらとかフグなど、繊細な和食だともっと引き立ちそうです。

3つともよく個性が出ていて、リースリングは本当に奥が深いし難しい。甘みで誤魔化されやすいのもあるから、シャルドネやソーヴィニヨン・ブランのように品質レベルの判断がバチッと決まらない。それ故に理解されにくいのかもしれない。

ちょっと前まで香港市場ではリースリングの種類があまりなかったのですが、最近になって増えてきたから私としては嬉しいですね。合わせる料理もリースリングは和食、洋食、ベトナムや中華といった東南アジア料理とも相性が良いので、レストランでもっとあってもいいのにと思うけれど、理解してもらうまでにはまだまだ時間がかかりそうです。同じアロマティックなソーヴィニヨン・ブランは何処でも見かけるのにね。何故だ?逆にソーヴィニヨンの方が料理との組み合わせは難しいと思うんだけれどな。一夜にしてデビューはないけれど、じわじわ辛口リースリングに追い風が吹いてはいるから良い状況ではあるのではないかな。