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ソムリエとディプロマ 2

Sommelier & Diploma

では今回はWSETディプロマについて。日本ではWSET(Wine and Spirit Education Trust)自体が以前はあまり知られていなかったようですが、最近になって受講する人も増えたし、知名度が上がってきたように思います。WSETはロンドンに本部を置く世界最大のワイン教育機関で、英国のワイン商組合『Vintners Company』により1969年に創設され、現在では世界62カ国でWSETの教育組織が運営されている国際的に認められている認定資格。

認定資格は大まかにレベル1(L1)からレベル5(L5)までの5段階があり、前回出てきInternational Higher CertificateはL3とほぼ同じ中級レベルとして扱われています。日本では日本語のみで受験可能で、L3と同じくマークシート50問。ただL3にはある小論文形式の問題もなく、テイスティングも1つ(L3は2つ)。
補足:ディプロマとL3のレベルが開きすぎているということもあって、L3の試験は現在小論文の書かせる問題が増えたようです。全体的にL3の試験レベルが上がっています。

L4Diplomaを受講するにあたってL3保持者はそのままL4に行けるが、International Higher Certificate保持者の場合、ディプロマエントリーの試験に合格しないとディプロマ受講ができないのね。この試験が受かった=L3資格取得にはならず、あくまでL4を受講する権利を得たって考えです。なのでディプロマ目指している人は英語での試験はキツイけれど、躊躇せずL3を選んでください。

L4 ディプロマ受講にあたっては、L3の資格保持が必要なので、WSETL3からが始まりになります。ディプロマは一番最短で取得した場合は2年ですが、非常に厳しい道のりです。2年間で全てのプログラムが組まれて、6つのUnitを取っていく。自分のペースに合わせて試験を次に遅らせることができるので、ゆっくりと進めたい人は4,5年かかるし、さっさと終わらせられる人は2年。私の経験から言って、間はできる限り空けない方がいい!やる気をずっと保つのは難しいし、ましてや仕事しながらの勉強だから、時間を確保し続けるのも大変です。

WSETのホームページによると因みに2014年までにディプロマを取得した数は世界で累計約8000人(1970~2014年の約44年間の数字)で、其の内日本人は20人強。日本のWSET提携校の資料だと日本にいる日本人としてしか、数を数えていないので、国内の保持者15人程度。
私のような日本人だけれど日本で試験を受けていない人は含まれていないのです〜。難易度はシニアと比べて2倍はゆうにあります。英語の理解力にもよりますが、戦略を立てて、方向を見失わなければ受かります。あと絶対にやり遂げる精神力は大切です。

試験内容はUnit2だけがマークシート。Unit1はアルコールビジネスに関するテーマでの論文が2つ。Unit3~6が理論とテイスティング。この理論が大変ったらありゃしない。

In relation to spirits, write about each of the following:
a)Bourbon
b)Cognac labelling
c)Diageo PLC

これは過去に出題されたUnit4のスピリッツの理論。量としては1問A4の紙に1面びっしり書く。それも文章にして。当然英語。試験は65 分でテイスティング(3つ)と理論で構成されており、時間配分として30分テイスティングで35分が理論になる。テイスティングを早く終わらせるに越したことがないけれど、どう頑張っても約30分はかかる。となると残りの35分を5分で簡単に何を書くかをある程度リストアップして、後の30分でこなすので、それをひたすら文章につなげていく。1問にかけられる時間は10分以内になる。

設問を解くに当って暗記は必要だけれど、その内容を建設的に理解して、流れがわかっていないと書けないわけです。特に顕著にその必要性が問われるのが最難関試験のUnit3、スティルワイン。〜が…になるのはxxxという条件によりというふうに理由付けをして説明していかないといけないのです。然も書く量は他のUnitに比べて1問につき A4用紙3面強。

こういう論文形式だと採点者によって点数が変わってくると思うでしょう。そうのとうり。なので、ディプロマの採点者は一人なのです。全ての受験者に対して公平であるために。試験結果がどのくらいの出来栄えなのかもストレートに報告してくれます。因みに5つのレベルわけがあり、其々のUnitの理論とテイスティングとその総合が知らされて、当然全部のUnitをPass以上を取らないと最終的なディプロマの終了にはなりません。其々のUnitの成績を総合してディプロマのお免状にもどのレベルで到達したのか記載されるので、心してください。お免状に記載されるんだから良い成績がいいでしょ。以下が5つのレベルの詳細です。

Fail Unclassified  <44% :全然ダメレベルで不合格
Fail  45 to 55% :合格ラインに近い不合格
Pass  55% to 64% :合格(可)
Pass with Merit  65% to 74% :合格(良)
Pass with Distinction  >75% :合格(優)

当然Fail Unclassified とFailを取った場合は再試で、またその不合格だったUnitの再試代金を払って受けなおしです。たとえテイスティングがPassでも理論がFailで総合Failならば再試、再試で総合的にPass with Meritを取ったとしても、再試なのでPassとしか扱われない。ディプロマ取得は大学の学位の3分の2ほどと言われています。

イギリスは今でこそワインを産出するようになりましたが、昔から仲買業、貿易でワインを扱ってきたため、試験の基盤が卸商としてこのワインの商業的商品価値の判断が極めて重要でした。ギルドから始まりVinters Companyが実際長い間ワイン取引の権利を持っており、卸、流通で富を得ていた歴史が長いのです。WSETはサービスに携わる人以上に、卸、流通、小売に携わる人により特化した内容になっています。テイスティングにしても、このワインはこの価格帯で買う価値があるのか?どの消費者層に売ることができるのかというかなりビジネス目線でワインを判断します。

結論として、WSETのディプロマはアルコール業界に携わる人向けで、特にバイヤー関係の人こちらの試験が向いているでしょう。JSAソムリエと違い、ワインに対する評価はとてもシビアで、いかにこのワインを勧めるではなく、このワインをビジネスとして買う価値があるかに
焦点が置かれています。卸の買う量はケースじゃなくてパロットだからねー。もちろんケースでも買えるんだろうけれど、量が多いってこと。マリアージュが全然重要視されません。

欠点は時間と資金がかかること(学費が高いしそれだけですまない)、精神的に厳しい状態が少なくとも長期間続くこと。全て試験がテイスティングも理論も英語の論文なので、このスタイルに慣れることと語学の問題。趣味の域を超えてますね。それでも良いって方はどうぞ。ディプロマ保持者はマスター・オブ・ワインを目指すにあたって、ディプロマ保持はよしとみなされるので、学術的な方向に進みたい方は鉄板です。田中まいMWをはじめジャンシス・ロビンソンMW、私が一番尊敬してやまないジェラール・バッセMWもディプロマ保持者です。世界的に認知度は高いので、WSETディプロマ保持者でワイン関係の人はどれくらいの知識があるかを簡単に理解してもらえますね。